上手な花束とは?素人とトッププロでは見る場所が違う

監修・解説:フラワーアーティスト® 永塚慎一

「上手な花束」と聞いたとき、皆さんは花束のどこを見るでしょうか。

色合いがきれい。
花の組み合わせがかわいい。
豪華に見える。
全体の形が整っている。

一般のお客様が花束を見るとき、まず目に入るのは、バンディングポイントより上の花が見えている部分です。

もちろん、そこが美しいことは非常に重要です。

しかし、花束を長年作ってきたトッププロが見る場所は、それだけではありません。

私は花束を見るとき、バンディングポイントより上の美しさはもちろんですが、花束の底辺がどのように展開しているのか、茎がきちんとスパイラルになっているのか、バンディングポイントに不自然な癖がついていないか、といった構造まで見ます。

なぜなら、花束の上手さは「その瞬間きれいに見えるか」だけでは判断できないからです。

一般のお客様が最初に見るのは「花束の上」

花束をプレゼントされたとき、多くの人が最初に見るのは花の部分です。

「きれい」
「かわいい」
「豪華」
「素敵」

これは当然のことです。

花束は人に喜んでもらうためのものですから、バンディングポイントより上の部分が美しくなければなりません。

色の組み合わせ、花の配置、高低差、花の向き、全体のシルエット。

これらは花束の第一印象を決めます。

一般のお客様が、まずそこを見て花束の良し悪しを判断するのは自然なことです。

しかし、トッププロにとって、上部が美しいことは「完成した花束としての大前提」です。

そこからさらに別の部分を見ていきます。

トッププロは「花束の下」まで見る

トッププロが花束を見るとき、バンディングポイントより下の茎の部分も重要な判断材料になります。

例えば私が見るポイントの一つが、花束の底辺です。

きちんと作られた花束では、茎がスパイラルに組まれ、底辺が大きく展開します。

※スパイラルやクッションなど、プロとアマチュアの花束の技術的な違いについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

私が一つの目安として見るのは、底辺が180度以上に展開しているかどうかです。

上部だけを見れば美しい花束でも、下を見ると茎がきれいに展開していなかったり、途中で不自然に交差していたりすることがあります。

一般のお客様にはほとんど気にならない部分かもしれません。

しかし、プロが見れば、そこにどのような技術で花束を組んだのかが現れています。

底辺が180度以上に展開しているかを見る理由

なぜ底辺の展開を見るのでしょうか。

単に「見た目がきれいだから」というだけではありません。

花束全体が適切なスパイラルで構成されているかを判断する一つの材料になるからです。

茎が一定方向へきれいに流れ、無理なく組まれていれば、バンディングポイントより下にもその構造が現れます。

反対に、途中で茎の流れが乱れていたり、無理な力がかかっていたりすると、下部にもその影響が出ます。

花束は、上だけを整えれば完成するものではありません。

上から下まで一つの構造として成立していることが重要なのです。

スパイラルは「形を作るため」だけの技術ではない

スパイラルというと、花束を丸く広げたり、きれいな形にしたりするための技術だと思われることがあります。

しかし、それだけではありません。

正しくスパイラルを組むことは、茎に無理な負荷をかけにくくすることにもつながります。

花束を作っている最中にはきれいに見えていても、茎同士が無理に交差していたり、特定の場所に強い力がかかっていたりすれば、茎を傷める原因になります。

だからプロは、完成した花束の上部だけでなく、茎がどのように組まれているかまで確認します。

美しく見せるための技術と、花を守るための技術。

この両方が必要なのです。

バンディングポイントに「変な癖」がないか

もう一つ、私が見るのがバンディングポイントです。

バンディングポイントは、花束を束ねる支点となる重要な場所です。

ここに不自然な癖がついていたり、茎が無理に曲げられていたりすると、その場では問題なく見えても、茎に負担がかかる場合があります。

特に大切なのは、花束を作った瞬間だけを見るのではなく、その後どうなるかまで考えることです。

花束は完成した瞬間がゴールではありません。

お客様が持ち帰り、ラッピングを外し、茎を切り、水に入れて飾ります。

そこから花の時間が始まります。

だから私は、バンディングポイント周辺の構造も含めて花束の完成度を見るのです。

【H2】本当の技術差は花束を飾ってから現れる

花束の技術差で非常に重要なのが、完成したその場では分からない部分です。

花屋で受け取った瞬間には、どちらの花束もきれいに見えるかもしれません。

しかし数日経ったときに差が出ることがあります。

茎に無理な力がかかっていないか。

茎が傷ついたり折れたりしにくい構造になっているか。

水を吸いやすい状態になっているか。

花束をほどいて花瓶に飾ったあとも、できるだけ長く花を楽しめるか。

プロはこうしたところまで考えて花束を作ります。

つまり、花束の品質は、完成した瞬間の写真だけではすべて判断できないのです。

送り主には見えない「花持ち」という品質

ここは、花を贈る仕事を考える上で非常に重要なところです。

例えば、ある人が大切な方へのプレゼントとして花束を注文したとします。

花屋で受け取ったときにきれいであれば、送り主は満足して相手に渡します。

その時点で送り主にとっては「素敵な花束を贈れた」と感じるでしょう。

しかし、その花束が数日後どうなったのかを、送り主が知る機会はほとんどありません。

もし茎が傷んで花持ちが悪かったとしても、それを実際に経験するのは花束を受け取った人です。

受け取った人が「思ったより日持ちしなかったな」と感じても、その感想が送り主や花屋まで戻ってくるとは限りません。

ここに、花の仕事の難しさがあります。

見えないところで品質が評価されているのです。

プロの技術は、お客様から見えないところにもある

私は、プロの技術とは、お客様に見えるところだけをきれいにすることではないと考えています。

もちろん、受け取った瞬間に「わあ、きれい」と思っていただくことは大切です。

しかし、それと同じくらい、その花をできるだけ長く楽しんでもらうことも大切です。

底辺がどう展開しているか。

スパイラルが正しく組まれているか。

バンディングポイントに無理がないか。

茎に必要以上の負担がかかっていないか。

こうした部分は、お客様にはほとんど見えません。

しかし、見えないからやらなくていいのではありません。

見えないところまできちんと作る。

私は、それがプロの仕事だと思っています。

上手な花束とは「見た目」と「構造」の両方が美しい花束

では、上手な花束とは何でしょうか。

私は、見た目の美しさと、技術的な構造の両方が成立している花束だと考えています。

バンディングポイントより上を見れば、一輪一輪の花が美しく、全体として魅力的に見える。

そして下を見れば、茎が美しくスパイラルに組まれ、底辺がしっかりと展開し、バンディングポイントにも無理がない。

さらに、花瓶に飾ったあとまで考えられている。

上だけでも、下だけでもありません。

その両方が成立して初めて、完成度の高い花束になります。

まとめ|花束の本当の上手さは見えない部分にも現れる

一般のお客様とトッププロでは、花束を見るポイントが違います。

一般のお客様が、まず花の美しさやかわいらしさを見るのは当然です。

一方でトッププロは、その美しさを作り出している構造まで見ます。

底辺の展開。

スパイラル。

バンディングポイント。

茎への負担。

そして、花を飾ったあとの日持ちまで考える。

花束を渡した瞬間には見えないところにまで責任を持つ。

私は、それが花束を作るプロに必要な技術だと考えています。

本当に上手な花束とは、受け取った瞬間に美しいだけではなく、その後も花を楽しんでもらえる花束なのです。

監修者プロフィール:永塚慎一

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